大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和36年(く)128号 決定 1961年12月23日

少年 U(昭一七・九・九生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、自分は本件の被害者である○川○子(当一八年)とは半年位前から交際しており、その間ずつと肉体関係もあり、たまたま今回の事件となつた原因は、同女の実父が警察に告訴したためであつて、自分と同女との関係は強姦などというものでなく、あくまでも同意に基くものであり、以上の事情から原決定は処分が著しく不当である、というにある。

しかしながら原決定によれば、所論の強姦罪の点については原決定もその成立を否定しており、少年が日本刃を不法に所持したという銃砲刀剣類所持取締法違反の点だけを認定し、かつ少年の知能、性格、経歴、非行歴、今回の○川○子に対する行動を含む最近の行状、家庭の状況と保護能力などを総合考察して中等少年院送致の決定をしているのである。そして記録によれば少年が右日本刀不法所持の犯行をしていることの外、原決定が詳細に示しているとおり、幼いときから素行が悪く、非行をくりかえし、中学卒業後も転職を重ね、○川○子に対する行為も強姦罪は成立しないとしてもあるいは暴行を加え、あるいは日本刀で脅迫し、同女を自宅に数日間とじこめて帰宅を許さず、監禁状態におくなどひどいしうちを続けたのであつて保護者にも保護能力がなく、その他諸般の事情を考慮すると、この際少年に対しては少年院に送致して矯正教育を施す必要があるので、これと同趣旨の原決定はまことに相当であり、その他記録を精査しても決定に影響を及ぼす法令の違反、重大な事実の誤認または処分の著しい不当の点は見当らない。よつて少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条により本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 加納駿平 判事 河本文夫 判事 太田夏生)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例